自主事業:
愛知県芸術劇場芸術監督 勅使川原三郎新作ダンス『ワルツ』
魂が奪われる陶酔の三拍子
2022年、世界のダンス史に名を刻んだ愛知県芸術劇場芸術監督・勅使川原三郎、2023年期待の新作!!
淡々とした単純な調子を繰り返す音楽から始まり
魅惑的で時に魂が奪われるような陶酔を誘い
三拍子の渦に巻き込まれ
時に悲劇的に
時に歓喜狂乱し
さらに爆発的な終わり無き繰り返し
あらゆるワルツが展開する音楽宇宙
勅使川原三郎
レビュー掲載のお知らせ(2023/12/16):
鑑賞&レビュー講座2023参加者によるレビューを掲載しました。詳細は以下の「レビュー」よりご覧ください。
当日券のお知らせ(2023/7/14):
7/16(日):10:00~16:45 地下2階プレイガイド、17:15~ 大ホール入口
7/17(月・祝):10:00~14:45 地下2階プレイガイド、15:15~ 大ホール入口
なお、前売券は愛知県芸術劇場オンラインチケットサービス、地下2階プレイガイドにて各公演の前日正午まで販売しております。
概要
公演日時 |
2023年7月16日(日)18:00開演 ※ 開場は開演の45分前 |
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会 場 | 愛知県芸術劇場 大ホール |
主 催 | 愛知県芸術劇場 |
お問合せ |
愛知県芸術劇場 |
スタッフ・キャスト
スタッフ・出演者 |
振付・演出・装置・照明・衣装・ダンス:勅使川原三郎 |
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チケット情報
チケット料金 |
全席指定 ※ U25は公演日に25歳以下対象(要証明書)。 |
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チケット取扱 |
チケット発売 2023年6月16日(金) 10:00~ (※メンバーズは☆印の窓口にて1日早く購入できます。) 愛知県芸術劇場メンバーズへの登録が必要です。詳細はこちら ☆愛知芸術文化センタープレイガイド(地下2階) TEL 052-972-0430 平日10:00-19:00 土日祝休10:00-18:00 (月曜定休/祝休日の場合、翌平日) チケットぴあ [Pコード:517-892] ※購入方法によりチケット代金のほかに手数料が必要になる場合があります。 |
鑑賞サポート
観劇·鑑賞サポート |
視覚に障がいのあるお客さまへの鑑賞サポート ·聴覚支援システムとして「ヒアリングループ(磁気ループ)」が客席の一部で作動します。 |
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託児サービス (要予約) |
【17日(月・祝)公演のみ】 オフィス・パレット株式会社 TEL 0120-353-528(携帯からは052-562-5005) 月~金 9:00~17:00、土 9:00~12:00(日・祝日は休業) |
ニュース
2023.6.6 サカエ経済新聞:愛知県芸術劇場でダンス「ワルツ」 勅使川原三郎芸術監督の新作を初演 |
2023.5.26 ステージナタリー:三拍子の世界にダンサー3人で迫る、勅使川原三郎新作ダンス「ワルツ」 |
2023.5.22 Qetic:愛知県芸術劇場芸術監督・勅使川原三郎の新作ダンス『ワルツ』が7月16日(日)~ 17日(月・祝)に開催 https://qetic.jp/art-culture/st-karas-waltz-230522/450462/?utm_campaign=PostShareBtn |
レビュー
鑑賞&レビュー講座2023参加者によるレビュー
鑑賞公演:2023年7月16日(日)・17日(月・祝)勅使川原三郎の新作ダンス「ワルツ」愛知県芸術劇場大ホール
愛知県芸術劇場では舞台芸術を言葉で紡ぎ、レビューを執筆することも舞台と観客とのコミュニケーションの一つと考えています。
以下の作品は、講師アドバイス、推敲を経て完成した2023年度ステップアップライターの作品です。
©Naoshi Hatori
©Naoshi Hatori
愛知県芸術劇場芸術監督就任後も、ヴェネツィア・ビエンナーレ・ダンツァ金獅子功労賞受賞(2022)と止まるところを知らない勅使川原三郎。その新作公演『ワルツ』が、愛知県芸術劇場で初演された。アーティスティックコラボレイターの佐東利穂子はもちろん、新たにスペイン出身で元ドイツ・ヘッセン州立劇場バレエ団所属のハビエル・アラ・サウコを迎えた。作品は黒いスーツを着た3人がいくつものワルツ(録音を使用)に合わせソロやデュオ、トリオを披露する。純粋な音楽とダンスの関係性によって「ワルツ」に隠された豊穣の世界を解き明かす。
勅使川原は永遠と螺旋を描き続ける運動をベースに、ときおりロッキングや武道を思わせる動きが現れ、観客を飽きさせない。佐東は勅使川原ならではの螺旋の動きに加え、するどい腕さばきが、美しい軌跡を残す。アラ・サウコはフラメンコを想起させる情熱的な足さばきと、腕や手先の抒情的な表現力が前述の2人とは違ったアクセントとなる。各々が個性あふれるダンスを展開するが、流れ続ける録音されたワルツは、それぞれの身体性を受け入れ、調和をもたらし、さまざまな解釈を可能にするストーリーを立ち上げる。たとえば佐東とアラ・サウコのデュオでは、アラ・サウコの情熱的なダンスと佐東のシャープな動きが交じり熱狂に満ちた愛を起動し、やがて曲が進むにつれ、2人は別れ悲劇的な恋へと姿を変える。演出も計算されており、ときおりワルツに入るノイズや無音が我々の想像力を刺激し、簡素な暖色の照明がダンサーに陰影をつけ、ドラマ性を引き立てる。中盤、暗幕が上がりコンクリート壁の奥舞台が現れる。まるで荒廃した世界を想起させ、それを背景に踊る勅使川原からは新たなストーリーが立ち上がる。なにより、ワルツの構造自体が緩急に富みドラマチックなのだ。振付家は、ワルツが内包するストーリー性を可視化している。
彼らの躍る姿を見ていると、おもわず身体を揺らし共に踊っているような感覚を覚えるだろう。ワルツには、思わず踊り出してしまう魅力がある。リズムに乗りやすく誰にでも開かれたものであるからだ。そして、クライマックスには舞台袖幕が上がり照明が露わになる。舞台を構成するすべてが晒され、ダンサーの身体のみが舞台に浮かび上がる。彼らはゆっくりと観客へ近づく。歩調は合い、我々の身体に溶け込んでいく。観客とダンサーは交わり、踊る喜びや楽しみを共有する。
『ワルツ』ではダンサーの身体がメロディを紡ぎ、豊かな物語を立ち上げ、観客の身体と同期する。こうして彼らがダンスで奏でた三重奏は、終演後も魅惑的な余韻を残した。
杉本昇太(鑑賞&レビュー講座2023ステップアップライター)
©Naoshi Hatori
©Naoshi Hatori
2023年7月16・17日に愛知県芸術劇場大ホールで新作ダンス公演「ワルツ」が上演された。同劇場の芸術監督である勅使川原三郎が振付・演出、・照明・衣装を手掛ける。ダンスは勅使川原三郎のほか、アーティスティックコラボレーターの佐東利穂子とスペイン人ダンサーのハビエル・アラ・サウコが参加している。上演時間は60分。
冒頭、もの哀しい静かなワルツにのせて勅使川原のソロが始まり孤独な世界観が漂う。 続いて、誰もが耳にしたことのあるクラシックのワルツ、ヨハン・シュトラウスの「春の声」で佐東とアラ・サウコが華やかに舞う。
音楽はすべて三拍子の舞曲であるワルツが使用され、全編を象徴するテーマとなっている。曲調の違ういくつものワルツが場面ごとに展開し、単調さは感じさせない。華麗なクラシックや映画音楽、歌入りの曲や繊細なオルゴール曲などあらゆるワルツが使われており、どれもダンスと調和して美しい。ダンサーが力強く踏み鳴らす足音のみでワルツのリズムを刻むシーンもあった。
舞台装置はとてもシンプルだ。特別なセットはなく、照明も1色のみで展開する。計算された光と影が舞台に奥行きを与え、踊り手を浮かび上がらせる。舞台衣装は統一感のあるデザインで、ややゆったりとした形の黒いジャケットとパンツに白いシャツ。フォーマルにもカジュアルにも見え、多様なワルツに違和感なく調和するが、衣装自体が何か強いメッセージを発する印象はない。シンプルな舞台とモノトーンの衣装はダンサーの動きを際立たせ、観客のイメージを掻き立てる効果を発揮している。
いくつか印象的なシーンがあった。 勅使川原が舞台に一人佇み、遠くからわずかに響くワルツの音に耳を澄ましている。彼自身の過去の孤独を投影した心象風景だろうか。想像をめぐらすうちに、観客の中にある孤独の記憶とも共鳴する空気を感じた。
また、佐東とアラ・サウコが何度も立ちあがろうとするが力無く崩れ落ち倒れこんでしまうシーンは、作品ノートの勅使川原の言葉「世界を支配する不合理は、とめどもなく我々に迫り来る」状況を表しているかのように感じた。不自由で、無力で、理不尽な力の前になすすべもない。舞台に横たわり動かず表情もうつろだ。それまでは力強く生命力のみなぎっていた体が全く反対の様相を見せ、身体を自在に動かせない不自由さを表す振付もまた、踊り手の深い表現力のもとに成り立っている。
後半にかけて、舞台は驚くべき広がりを見せる。 背景の幕が上がると、大ホールの奥行きある広大な空間が露わになる。はじめは隔てられていた舞台前方と後方の二つの世界は、次第に領域を踏み越え広い一つの空間となっていく。それに伴い、音楽はいくつかのワルツが入り乱れ、ダンサーたちは円を描く音の洪水のような喧騒の中で激しく踊る。ワルツの渦の遠心力に引き寄せられ、観客も音楽世界に巻き込まれてゆく陶酔を味わう中、ふいに客電が明るく灯り、客席と舞台空間が照明一つで溶け合う。
劇場の幕や舞台と客席の空間の隔たりは、「ここまでが作品の世界である」と無意識に領域を定義づけているが、勅使川原は、ワルツに陶酔した世界観を作り上げたうえで、観客が無意識に受け入れている約束事を取り払い、それまで意識の外にあった空間の存在を提示してみせた。そしてそれは観客に、自分の周りに無限に広がる「宇宙」の存在を連想させる。
ラストは無音の中、ダンサー3人がまっすぐ客席側へ歩いてきて、こちらに踏み込む寸前に幕となる。しかし、幕が下りてもなお、彼らは私たちの心に歩を進め、ワルツの余韻は響き続ける。
横井ゆきえ(鑑賞&レビュー講座2023ステップアップライター)
©Naoshi Hatori
©Naoshi Hatori
2023年7月16日(日)、愛知県芸術劇場芸術監督である勅使川原三郎の新作ダンス「ワルツ」が愛知県芸術劇場大ホールで上演された。勅使川原は2020年度に愛知県芸術劇場芸術監督に就任し、芸術監督就任記念シリーズ3公演で演出・振付・出演。その後21年度に芥川龍之介の小説をもとにした「勅使川原三郎版『羅生門』」、22年度は東海圏にゆかりある若手ダンサーと「ダンス『風の又三郎』」で振付・演出を行う等、精力的な活動を行ってきた。今回は30年以上勅使川原の作品に出演し続けるアーティステックコラボレーターの佐東利穂子、スペイン出身で18年から21年にヘッセン州立劇場バレエ団に所属し、昨年勅使川原に見出され、今回勅使川原の舞台に初めて立つハビエル・アラ・サルコと共に創りあげた。
最初に流れてきたのは標題どおりのオーソドックスなワルツ。割り込むように聞こえてきたのがヨハン=シュトラウス的な大円舞曲。登場した3人はクリアな足音を立て、しかし、ワルツではないステップを踏みながら大らかに踊っていた。その後、代わる代わる多彩なワルツの断片が、止めどなく流れてくる。まるでダンサーそれぞれのライトモチーフを演奏しているかのようだ。3人は個を押し出すかのように自由に踊っているように見えたが、図ったかのような動きの重なり、ぴったりと合ったステップの靴音は、3人の思いが深いところでつながっていることを感じさせた。
音楽と共に見事なのは舞台転換の妙である。舞台は黒一色で何も見当たらないが、左右の幕を引いたり戻したりすることで3Dのような空間をつくり、時には舞台の奥まで惜しげもなく見せる。舞台の大きさや奥行きが変化するような錯覚が、舞台中央から代わる代わる消えては現れるダンサーをよりトリッキーに見せる。何もない舞台を、これだけ変化のある空間に見せる手腕は本当に素晴らしい。照明は全て同じ色だったが、ダンサーをいろいろな表情に映し出していた。照明の当たる角度によって、嬉嬉として踊っているようにも、悲壮感を漂わせて踊っているようにも見える。黒い舞台とダンサーの入ったフレームも、昔の白黒映画の1シーンのようにも、路地裏でストリートダンスに興ずる姿にも見える。それぞれが、全ていらないものを削ぎ落とす中で生み出したパフォーマンスの変化だった。クライマックスは悲劇的な音楽に感極まる部分も織り交ぜながら、3拍子のキックもさらに強く響き、興奮冷めやらぬ中、幕を閉じていった。
フライヤーの言葉「あらゆるワルツが展開する宇宙音楽」が心に残る。叙情的な3拍子の音楽に、3人の身体が生命を吹き込み、音楽と舞踊、そして新しい舞台美術が一体となって新しい音楽をつくり出すダイナミズムは、まさに「宇宙音楽」ではなかったかと感じた。
小町谷 聖(鑑賞&レビュー講座2023ステップアップライター)
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