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鳴海康平 (第七劇場代表、演出家)
今回応募があった114作品をすべて読み、ドラマに対する多様な視線と出会いました。これは要項にある「あなたの考える演劇上演のためのテキスト」という要件が反映されたのだろうと感じます。プロットに対する創意だけではなく、構造への挑戦や、コンセプトとしての提示など「戯曲Drama
とは何か?」というコピーに呼応した応募作品も見受けられ、「演劇上演のためのテキスト」の定義とともに、その先にある「演劇上演」にも思考が揺さぶられる刺激的な114の出会いだったと感じています。
三浦 基 (「地点」代表、演出家)
通常の戯曲の形式ではない作品が散見されました。
演劇の形式の可能性を感じさせると同時に、コンセプト過多に陥ってしまう傾向が見受けられました。
しかし全体を通しては、まだまだテレビや映画のシナリオのようなありきたりな設定で、ありきたりなせりふの口調で書かれた戯曲が半分以上を占めていました。そんな中から、少々未完成でも切実な口調、切実な問題意識を持った作品を、一次通過するように心がけました。
篠田千明 (演出家、作家)
全作品から選ぶのが想像以上に大変でした。
全作品から半分にはできたのですが、それ以降はなにかの基準が必要になり、それがいまの自分にしっかりあるわけではなかったのでどうしたものか、とつらい気持ちになったんですけど、ひとまず、3回以上、よみとおせたもの、ということにしました。
物語はどの作品もはっきりいってよくわかってません。でもこれはいつものことで、物語が”わかる”ことは現在よりも遠くにあるものだと思っています。
全部をよんだ感想は、私たち審査員がつよめにどーなん?ってゆった感じをじゃあこんなん、って返してきた作品がわりとあってうれしかったです。でも、それでもとりあえず投げてみた、というものは、やはり2回以上はよめなかったです。もし目の前であってたとしたら、こう投げるか、というのがさえるのかもしれないけれど、テキストのみだと少し手控える部分がもろにでてきて、やっぱそうだよな、とも思いました。誰を相手にしてるかわからない部分でおらおらの真剣勝負をするのは、人間いやだしできない、そういうことだよな、と。ちなみにわたしがのこした25作品のうち、半分ぐらいが審査会でなくなりました。その理由も、上に書いたことと少し似ている気がします。
応募していただいた方、みなさんありがとうございました。
羊屋白玉 (「指輪ホテル」芸術監督。劇作家、演出家、俳優)
入魂の114作品、応募されたみなさん、ありがとうございました。
最初は選出基準をもうけずに読み始めました。全部読むのは大変でしたが、お味噌汁の出汁をとったあとの鰹節の再利用をどうしようかというような、生活の日々のトピックに流されながらも読み続けるうちに、わたしの選出基準は定まってゆきました。
戯曲にある言葉達が、その言葉の本質を再確認させるように登場してくる作品を捕まえたいと思いました。世の中の混沌を切り裂き腑分けし、それがそれと分かる、分かるということを共有する機能が言葉には有ると思います。言葉の意味が自動化していないもの、例えば意味をずらすことで新たな意味を発見させたりする言語行為や再特異化を楽しんでいることが戯曲から見えてくる作品を選出しました。
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